ペットの名話 保管庫
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ポチとおじいちゃんは幸せにしていると思います。

母の昔話

母がまだ幼かった頃の話ですが
母の父つまり私のおじいちゃんは犬を一匹飼っていました。
なんの変わったところもないごく普通の雑種犬でしたが
おじいちゃんは可愛がっており犬の方も
おじいちゃんのことを好きだったようです。

おじいちゃんは役場に勤めていたのですが、
毎朝家から歩いていきます。

犬は大好きなおじいちゃんを追いかけるように役場まで
毎日ついていくのですが、役場には入れないので
おじいちゃんが帰るように言い聞かすと素直に帰ってくるのです。

賢い犬の名はあまり捻りがないのですが、ポチでした。
当時は犬の名前としては流行っていたのかもしれません。

大多数の犬好き派

大家族でしたので家の中でも
犬好き派と犬嫌い派と犬が苦手派に別れます。

犬が嫌い派は私の母と犬が苦手派は
おばあちゃんで残りの家族は犬が好きな多数派でした。

犬の散歩や餌やりはおじいちゃんがやっていたのでしたが、
出張で家をあける時には犬好きな
他の家族が代わりに担当していました。

母とおばあちゃん以外の人間は
皆犬を可愛がっていたので問題はありません。

ある時おじいちゃんが長めの出張になりたまたま犬が好きな
家族が全員出払ってしまうという非常事態が起きたのです。
家に唯一残っていたのは母とおばあちゃんのみでした。

二人はどうしようかと悩みましたが、
あまりたいした知恵は浮かびませんでした。

とりあえず散歩を自分達でするのは論外なので後で家族の誰か
が帰ってきたらしてもらうことにして目下の問題は餌やりです。

二人は別に犬を虐待する気も意地悪なことをする気も全くないので
いつもの時間に古い鍋の中に餌を用意して持っていきました。

ポチはすでにお腹を空かせて待っていました。
二人はどちらも足がすくんで動けませんでした
次第にポチも我慢できずに急かすように吠え始めると
ますます二人は動けなくなったのです。

おばあちゃんが庭の枯葉なんかを掃き出す竹ぼうきを構え
ポチを出来るだけ遠くへ引き離している間に母がポチの小屋の
側に餌が入っている鍋を置いてくることになりました。

おばあちゃんは果敢にもポチを隅っこに追いやり母を
急かしますが、いつもの強気はどこにやらすっかりビビリになって
いるので小屋から少し離れた場所にようやく置いてきました。

ポチがようやくおばあちゃんの竹ぼうきから解放され
小屋の方に戻って餌が入っている鍋を見つけても
微妙に遠く近づくことも食べることもできない距離です。

結局のところ、ポチはあわれにも他の家族が帰ってくるまで
餌を一口も食べることはできなかったようです。

ヘタレな二人もポチのことは可哀想に思っていても
どうすることもできずに辛かったそうでした。

私も話を聞いた時はポチのことを哀れには思いましたが
二人の困り果てた様子を想像して笑ってしまいました。

生を全うしたポチ

たまにこういった少し不運な出来事もあったのですが
私はポチが不幸だったとは思いません。

ポチには最愛のおじいちゃんがいたからです。
おじいちゃんとポチは老衰でポチが亡くなるまで
楽しく過ごしていました。

おじいちゃんは隠居生活をおばあちゃんと
ゆっくりと過ごすはずでしたが
仕事を辞めた後何年もしない内に病気で亡くなりました。

飼い主よりも愛犬が先に死ぬと犬は虹の橋と呼ばれる天国の
少し手前でご主人様を待っていると聞いたことがあります。
おじいちゃんとポチは天国でも
幸せにしているに違いないと思います。